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2024/11/17

力を抜くために

絵本を描き始めて1年半が過ぎた。
絵本を描くこととの出会いは、自分にとって心の解放の仕方を手に入れたことでもあった。
まだ解放の途上であり、死ぬまでに解放しきることが出来るのかも分からないけど、
そもそも解放しなければいけないわけでもないと思うし、あの世まで持っていくものかもしれない。
それでも今を生きている中で、出来るだけ心地良く自分なりの「自由」を見つけたい。

「絵本を描くこと」は自己に向き合い、その中で余計な力を抜き心の解放へと向かう。
「整体すること」は他者に向き合い、その中で施術を受ける方にも余計な力を抜いてもらい、自身の心の解放へと向かう一助になれればと考えている。

自己ばかりに偏っても良くないし、他者に向き過ぎても良くない。
中庸が良い。自己に向いていても他者が見え、他者に向いていても自己が見える。
両方あることが大事。

芸術と整体の役割は、どちらも余計な力を抜くということ。
過去の歴史からどちらも人間が人間である以上、必要で続いてきたものだと思うが、昨今はより必要になっていると思う。
息詰まる中に、フッとする瞬間をつくりたい。

力を抜くために2
力を抜くために2
力を抜くために3
力を抜くために4

2024/07/05

下ノ畑

東北の岩手県花巻市へ行ってきました。
目的は宮澤賢治のゆかりの地を訪ねることでした。
特に心が動かされたのは「賢治自耕の地」と呼ばれる賢治が晩年ひとり自炊生活をしながら過ごした家の傍にあった畑でした。現在、家は岩手県立花巻農業高等学校の方に移築されて畑だけが保存の会の方々によって残されています。朝早くその場所に出かけていって2時間ほど鳥たちの声を聴きながらぼーっとして過ごしました。とても気持ちのいい時間でした。
僕の考える賢治は、世界に境界線を引かない人。それによって彼の生き方は困難に見舞われたと思います。
質、古着商を営む裕福な家に生まれた賢治は、当時の地方の困窮を極める農村の暮らしに心を痛めながら、彼らと同一化するために苛烈とも思われる試行錯誤を繰り返した一生だったと思います。
賢治ほど巨大な作家になると様々なイメージが出来上がり、その中には聖人君主のような浮世離れしたイメージも存在します。ですが賢治の作品に触れてみると、ドロドロしていたり毒気のある人間の内面の叫びが見受けられ、実に僕らと変わらない人間的な印象を感じます。賢治の過ごした畑に身を置いてみると、賢治がなぜここで過ごしていたかわかる気がしました。自分の中のドロドロした感情に向き合うしんどさを自然の中に身を置くことで和らいでいたのかも知れません。太陽が降り注ぎ、風が吹き、鳥や虫たちは本当に可愛らしく、そこには邪心のようなものは感じません。自分の中の無垢な心はもともと存在し、それを自然が見出してくれるのです。そこには善悪もなく、境界線のない自然そのものの世界です。
自分もこんな気持ちでいれたらどんなに安らかだろうと思いました。
自分の仕事も、solariにおける空間が、自分にとっても、そこに来るお客様にとっても、この賢治の畑のようにありたいなと思いました。

下ノ畑2
下ノ畑2
下ノ畑3
下ノ畑4

2024/05/15

科学と慈愛

ピカソの若き日に描いた「科学と慈愛」という作品がある。重い病にかかった患者が、中央のベッドに横たわっている。その傍らに医者と赤ん坊を抱く修道女が付き添っている構図になっている。
医者は科学を表し、修道女が慈愛を表しているこの作品はやや概念的とも言えるが、この作品をピカソ本人が終生大事にしていたということがとても気になる。
医者は父性の象徴で、修道女は母性の象徴とも考えられる。男性性と女性性は違った性質のものだと思うが、世界もしくは宇宙はそうした違った性質の両者の調和、均衡のもとで成り立っているのかもしれない。
最近、相反するもののバランスについて考えることがよくある。
整体においても、体と心に触れることから物理的な論理や構造と、物理的に触れることのできないものに対して感応していく感性の力の両方を磨いていく必要性を強く感じるようになった。
良い施術は、そうした論理と感性が一体化した瞬間なのかな、などと考えている。
最近観た坂本龍一氏の生前最後の演奏を記録した映画「Ryuichi Sakamoto/opus」で彼はまるでピアノと一体化しているようだった。一音一音に気がこもり、こちらの心の奥の方まで響いてきた。彼の最後の演奏を聴いて、彼がもともと論理的な思考力と、稀有な感性の持ち主であったことと、東洋と西洋の旋律を融合し、相反しているものを見事に調和させている表現者であったことがよく理解できた。
ほど遠いとはいえ、この演奏のような仕事ができたらなと思った。

科学と慈愛2
科学と慈愛2
科学と慈愛3
科学と慈愛4